はじめに
キャリアや職場環境、ライフスタイルを変える特効薬として、「転職」はカジュアルになってきています。手軽に始められるーー。半面、それはライバルの増加を意味します。応募したい魅力的な求人には、100人近いライバルがいることも。
その中から選ばれるためには、まずは「履歴書」と「職務経歴書」を限界まで練り上げることです。本稿では、転職エキスパートが教える、選ばれる履歴書・職務経歴書の書き方の秘訣を解説します。
【目次】
1.転職市場の現状と書類の重要性
2.履歴書のポイント「あなたの強みを見せるコツ」
3.職務経歴書の要点「実績を効果的にアピールする方法」
4.ミスを避けるための注意点
5.まとめ
1.転職市場の現状と書類の重要性
近年、転職市場は大きな変化を遂げています。終身雇用の考え方が薄れ、キャリアアップのため、または自分のライフスタイルに合わせて転職する動きが活発になっています。
転職市場の現状
近年、多くの企業はグローバル化の波やテクノロジーの進化に伴い、新しいビジネスモデルや働き方を模索しています。その潮流に合わせて、従来のような長く安定した職を求めるのではなく、自らのスキルやキャリアを磨くために積極的にステージを変えていく人々が増えてきました。
また、近年の新型コロナウイルスの大流行が、リモートワークやフレックスタイム制など、多様な働き方の普及に拍車をかけました。結果、転職の動機や選ぶ職場の基準も色とりどりとなってきました。
書類選考のポイント
そんな中にあっても、転職活動において不変の真理が一つあります。転職成功は、まず「書類選考」を通過しないと始まらないことです。
書類選考は、企業が応募者の中から適切な人材を見つけ出すための第一関門。企業の採用担当者が面接に呼びたい(会って話を聞きたい)候補者を選ぶための基本材料は履歴書や職務経歴書しかありません。その数は新卒採用なら1万、中途でも人気職種でも数百に及びます。
採用担当者もヒマではありません。履歴書・職務経歴書では自分の経歴やスキル、適性が、企業の求めるポジションにマッチしていることを、これ以上なく的確に、かつ分かりやすくシンプルにアピールすることが求められます。
印象に残る履歴書や職務経歴書が、次のステップへのカギとなります。具体的には、以下の点に注意して書類を作成することが重要です。
明確なアピールポイント
何を得意としているのか、どのような経験や実績があるのかを明確かつ定量的に記述する。
要点を絞る
長すぎると読む側の負担となるため、必要な情報のみを簡潔に記載する。具体的には「職務経歴書は全体で2-4ページ以内」、「1段落は400文字以内」、「1行は40字以内」
誤字脱字のチェック
小さなミスもイメージを損なう可能性があるため、十分にチェックする。他人にチェックしてもらうダブルチェックもおすすめ。
一部の企業では、書類選考の際にAIを活用するケースが増えてきています。AIが応募書類からキーワードやフレーズをピックアップし、それを基に評価するそうです。
自分の経歴やスキルを具体的でキャッチーなキーワードにできるかがポイントとなりそうです。例えば「新規事業立ち上げ」、「マネジメント」、「全国一位の営業成績」、「前年比300%成長」といったワードは刺さりやすいでしょう。
2. 履歴書のポイント「 あなたの強みを見せるコツ」
履歴書は貴方の顔写真や、住所、学歴、職歴、所帯持ちなら家族構成まで載っています。いわば貴方の分身で、貴方の印象を決める重要な書類です。更に言えば、それ一枚で自分の強みを最大限アピールする武器になります。ここでは、そんな履歴書の書き方を詳しく解説します。
志望動機・職務説明
ここは最も個性を出すセクションです。自分の強みや、企業に貢献できるポイントを的確に伝えることが大切です。志望動機は、志望する企業のビジョンやミッションに合わせた内容を考えましょう。
自己PRでは、過去の経験から具体的なエピソードを1つ取り上げ、その時の行動や考えや実績を元にアピールします。
具体的な書き方①
「経営大学院で学んだマーケティングの知識を生かし、前職では新製品のプロモーションを担当し、○○の施策により、事業部の売上を前年比20%増加させる成果を上げました。より大きな舞台で自分の力を高め、貴会の△△というビジョン実現に貢献したく、志望しました」
職務経歴に触れる際も、ただの羅列ではなく、どのような業務を担当し、どんな成果を上げたのかを明記することが重要です。
具体的な書き方②
「A社では営業として20歳代から40歳代の男女10人をマネジメントしました。前期は新規取引先の開拓に注力し、●●という手法で年間契約数を15%増加させる成果を上げました。この●●という手法は再現性が高く、社内でも評価され、1000人の社員の中で最優秀社員として表彰されました」
自己PR欄① 資格や学歴を効果的にアピール
所持している資格や学歴も、企業にとってのあなたの強みとなる要素です。ただし、すべての資格が役立つわけではないため、業務に関連性の高いものに絞りましょう。
具体的な書き方
「英語検定1級、TOEIC950点の資格を活かし、現職では海外の取引先と、通訳介さずの交渉も多数経験しました。クライアントとのスムーズな関係構築から数十億円単位の大型契約を多数実現しました」
自己PR欄② 趣味・特技でのアピール
趣味や特技は、自分の個性や広がりを示すための良い手段です。ただし、ただ羅列するのではなく、その趣味や特技がどのようにビジネスシーンで役立つのかを考えて書くと良いでしょう。
具体的な書き方
「20歳代から60歳代の男女50人規模の登山クラブを主宰し、チームでの連携の意義やリーダーシップを学んでいます」
履歴書作成に当たっては上記のポイントを意識して、あなた自身を最も効果的にアピールするツールへと磨き上げましょう。
3.職務経歴書の要点「実績を効果的にアピールする方法」
職務経歴書も履歴書同様、あなたのキャリアと実績を詳細に伝えるための重要な書類です。しつこいようですが、ただの経験の羅列ではアピールどころか逆にマイナスになることも。ここでは、実績を効果的にアピールするための要点とテクニックを紹介します。
数字を活用して具体的な実績を示す
抽象的な表現は避け、具体的な数字を用いることで、その実績のインパクトが明確に伝わります。
具体的な書き方
「現職のB社では事業部長としてマーケティング戦略の抜本的な改革に着手。具体的には「〇〇」「△△」という施策で半年で売上前年同期比200%を実現。コロナで落ち込んだ売上を回復させ、会社も4期ぶりに黒字転換しました」
結果だけでなく、過程もアピール
どのような方法や手段を用いてその実績を達成したのか、過程もしっかりと記載します。それにより、あなたの考え方や問題解決の能力をアピールできます。
具体的な書き方
「チームの生産性が低下していたため、新しいツールの導入や定期的なミーティングを取り入れることで、作業効率を20%改善しました。具体的には電子契約への切り替えにより作業工数が60%削減され、営業にかける時間が月平均20時間増えました。また、メンバーとの週1回、15分の1on1ミーティング実施により成約率が30%増しました」
スキルや能力のアピール
特定の技術やスキルを活用して実績を上げた場合、それも強調します。これにより、あなたの専門性やスキルセットを具体的に伝えることができます。
具体的な書き方
「Pythonを用いたデータ解析により、市場のトレンドを早期に捉え、新製品の開発方針決定を迅速化できました。具体的には半年かかりそうなところを2か月に速め、競合他社よりも早く市場に製品を投入し、シェアを想定の20%も多く獲得することができました」
チームでの業務やリーダーシップのアピール
一人での業務だけでなく、チームでの取り組みや、リーダーシップを発揮した際の実績も大切です。特に、管理職やリーダーポジションを希望する場合には、この点は特に重要となります。
具体的な書き方
「事業部長として従業員100人規模の事業を統括する傍ら、部門横断的プロジェクトのマネジメントを手がけています。今期は各部の部長・課長級5人のチームによる新規プロジェクトのマネジメントを行いました。〇〇に気を付けながら納期内に品質を確保して「***」という製品をリリースしました。このプロジェクトは会社の売上(前年比20%増)と業界シェア拡大(10%→15%)に大きく貢献し、私のチームは最優秀チームとして社内表彰を受けました」
職務経歴書は、あなたのキャリアと実績を詳細に伝えるためのツールです。上記のテクニックを活用して、あなたの強みや実績を効果的にアピールし、求めるポジションへの第一関門を潜りましょう。
4.ミスを避けるための注意点
履歴書や職務経歴書を書く際、少しのミスや不注意が重大な結果をもたらすことがあります。このセクションでは、ミスを避けるための具体的な注意点と、それに基づく具体的な例を紹介します。
誤字脱字・誤用を絶対に許さない
最も基本的なミスでありながら、最もよくあるミスが誤字脱字や誤用です。どんな良いことが書いてあったとしても台無しになりかねません。時には人の力を借りて、必ず最終チェックを行うようにしましょう。
曖昧な表現をなくす
繰り返しになりますが、曖昧な表現や、一般的すぎる言葉は、あなたの実績や経験を十分に伝えることができません。曖昧な表現を発見したら、具体的な表現に変えていきましょう。
SNSとの情報の整合性を保つ
最近は企業もSNSをチェックします。過去の勤務先や業績に関する情報は、LinkedInやSNSなどの公開情報と矛盾しないよう注意が必要です。
例えば、職務経歴書に「A社での勤務は2019年から2021年」と書いているのにLinkedInのプロフィールでは「A社での勤務は2018年から2020年」となっていると、信頼性が損なわれます。
個人情報や企業秘密の取り扱いに注意
具体的に書くのは良いのですが、自身の個人情報はもちろん、過去の勤務先や同僚、上司の詳細な情報や内部情報を無闇に書かないよう注意を払いましょう。うっかり企業秘密をバラしてしまうようでは、「脇の甘い人」と無用の先入観を与えかねません。
5.まとめ
書類選考は転職活動の第一歩。書類通過には貴方の経歴、スキル、志望する企業へのフィット感等を効果的に伝える書類作成の技術が必要です。
履歴書と職務経歴書を入念に作り上げれば、客観的に自分を評価できるようになったり、自身の考えや志向を整理できるといった副次的なメリットもあります。それらは次のステップである「面接」や「オファー条件交渉」にも生きてきますよ。